【獣医師監修】愛猫の認知症にそなえよう
猫も認知症になるということをご存じですか。 愛猫がシニア期に入ってから、大声で鳴くようになる、排泄(トイレ)の失敗をするようになるなどの行動の変化が見られたら、それは認知症かもしれません。認知症は徐々に進行するため気づきにくく、認知症を完全に治療する方法はありません。 そのため、シニア期をむかえる前からのそなえがとても大切です。
この記事の監修者
小澤 真希子
獣医師/日本大学 生物資源科学部 獣医保健看護学科 専任講師
東京大学農学部獣医学科卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了、動物病院勤務を経て現職。犬と猫の認知症研究に取り組んでいる。博士(獣医学)。獣医行動診療科認定医。
「認知症」ってなに?
認知症とは、脳の病気や障害などの原因により、認知機能が低下して、日常生活に支障がでてくる状態を表す言葉です。 猫にも認知症はあり、加齢による脳の老化が日常生活に支障をきたすような事例が確認されています。 猫の認知機能の低下に伴う行動の変化は、早ければ10歳頃から観察されるという研究報告があります。
認知症チェックリスト
認知症と運動機能の低下についての質問リストです。「いくつチェックがつけば認知症」というものではありません。しかし、環境変化などがないのにチェックの数が増えていく場合は、認知症やその他の病気の可能性が考えられます。
愛猫に次のような行動が見られないかをチェックし、認知症にそなえましょう。
□ 飛び乗ったり飛び降りたりしたがらない
□ 低い場所しか飛び乗ったり飛び降りたりしたがらない
□ ときどき身体がこわばっているように見える
□ 以前よりしゅん敏さが低下している
□ 足をひきずる
□ 猫用ドアからの出入りが困難になる
□ 階段の上り下りが困難である
□ 抱き上げると鳴く
□ トイレ外での排泄が増える
□ 身づくろいすることが減る
□ 飼い主さんとの関わり合いに消極的になる
□ 他の動物やオモチャで遊ぶことが減る
□ 眠る時間が増え、活動性が低下する
□ 理由もなく大声で鳴く
□ 忘れっぽいように見える
引用元: Guun-Moore DA. Cognitive dysfunction in cats: clinical assessment and management. Topics in Companion Animal Medicine 17-24, 2011
認知症の予防につながる3つのそなえ
現時点では猫の認知症を完全に予防する方法は分かっていませんが、次の3つを生活に取り入れてそなえましょう。
- 年齢に合った食事でそなえる
認知症の予防には毎日の食事が重要です。年齢により必要な栄養素は異なりますので、年齢に合った食事を選びましょう。また、シニア期になったら脳機能に良いEPA・DHAといったオメガ3不飽和脂肪酸を積極的にとり入れ、他にもオメガ6不飽和脂肪酸や、老化予防効果のあるポリフェノール・ビタミンC・ビタミンEをとり入れましょう。 - 適度な遊びと刺激でそなえる
ねずみの形をしたもの、フサフサなしっぽのようなものなど、愛猫が興味を示すおもちゃを見つけましょう。獲物を捕まえるという行動は猫の狩猟本能に働きかけ、脳への刺激になります。あまり遊びが好きではない場合、遊んだらご褒美をあげるなど、遊びは楽しいということを教えてあげましょう。 - 健康診断でそなえる
腎臓病や関節症、ホルモンの病気といった加齢によって起こりやすい病気にも注意しましょう。これらの病気と認知症との徴候が似ています。そのため、愛猫が健康なうちから定期的な健康診断を行うことが大切です。また相談しやすい動物病院を見つけて、気になる行動・症状があれば、飼い主様だけで抱え込まずに相談をすると良いでしょう。
室内飼いの猫はヒマになりがちです。遊びに誘ってあげましょう。
生活環境の改善、栄養面の向上、獣医療技術と設備の進化などを背景に、ペットの長寿化が進んでいます。この変化に伴い、関節の痛み、筋肉の衰え、腎臓機能や認知機能の低下など、加齢に伴う疾患や機能低下も見られるようになりました。この現状を背景に、ペットフードメーカーであるペットライン株式会社では、シニア期にそなえてわんちゃん・ねこちゃんの生活環境や食事の内容を見直し、変化を見逃さないようにすること、飼い主さんも正しい知識を身につけることが大切だと考え「いぬとねこ シニアのそなえプロジェクト」を発足しました。
このプロジェクトをきっかけに、皆さんで一緒に「シニアのそなえ」について考えていきましょう。