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【専門家監修】犬の熱中症に注意!症状や予防方法、応急処置の仕方を解説

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犬も熱中症になることがあり、重症化すると命の危険もあるため注意が必要です。この記事では、犬が熱中症になった時にどのような症状が現れるのか、そして熱中症にならないための対策についてご紹介。さらに、いざという時の応急処置についても解説します。

この記事の監修者

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秋山 蘭

ヤマザキ動物看護大学 動物臨床栄養学研究室
助教 [修士(獣医保健看護学)・愛玩動物看護師・ペット栄養管理士・CRT]* *監修当時の所属・肩書きです。

犬は熱中症になりやすい?!


熱中症とは「様々な要因により体温を調節する機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまう状態」のことです。人間同様、犬も熱中症になる危険があります。

人間には体温調節のために汗を分泌する汗腺(エクリン腺)が全身にありますが、犬には足裏の肉球や鼻先など、ごく一部にしか存在していません。そのため、犬は舌を出して「ハアハア」と呼吸(パンティング)することで体内の熱を放出し、体温を調節しますがこれらにも限界があります。特に高温多湿の環境下では、パンティングをしても十分に体内の熱を放出できず、熱中症になるリスクが高まるため注意が必要です。

こんな様子の時は要注意!犬の熱中症の主な症状


犬が熱中症になると、以下のような症状が見られます。
・ぐったりして(脱力など)元気がない
・フラフラ歩く
・呼吸が荒い
・体温が高い
(発症から長時間経過してショック状態になると、正常の体温〜低体温になることもあります。)

いつも元気な愛犬にこのような様子が見られたら、「熱中症かも?」と疑ってみましょう。熱中症がさらに重篤化すると、下痢や嘔吐、けいれんなどの症状が見られます。愛犬の命に関わる可能性のある危険な状態ですので、一刻も早く獣医師の指示を受けてください。

犬が熱中症になるのは暑い日だけじゃない!

気温が高まると熱中症の危険性も高くなりますが、注意すべきなのは、暑い日だけではありません。たとえ春先であっても、窓を閉め切った室内では温度が上昇するため、体温調節がしづらい犬にとっては熱中症になりやすい環境なのです。
また、気温が低くても湿度が高いと熱中症になることがあります。気温と湿度、どちらにも注意しなければなりません。

熱中症になりやすい犬種って?

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すべての犬に熱中症になるリスクはありますが、特に暑さに注意しなければならない犬種がいます。ここでは、熱中症になりやすいとされている犬種をご紹介します。愛犬が当てはまる場合は特に注意してあげてください。

1.短頭種


パグやボストン・テリア、ブルドッグ、シーズー、ペキニーズといった短頭種の犬、いわゆる鼻ペチャの犬種は熱中症になりやすいと言われています。なぜなら短頭種はマズル(鼻口部)が短く気道が狭いため、呼吸がしづらいという特徴を持っているからです。先述のとおり、犬は呼吸することで体温を調節しようとします。しかし、スムーズに呼吸ができないと熱がうまく放出されず、体温を下げることができません。また、夏の熱い空気が冷え切らないまま吸い込むため、熱がこもりやすいことも挙げられます。

2.北方原産または厚い被毛に覆われている犬種


シベリアン・ハスキーやボルゾイ、グレートピレニーズ、シェットランド・シープドッグなど、北方原産の犬種や厚い被毛を持つ犬種は、寒さに強い一方、暑さには弱いです。厚い被毛に覆われていると熱を逃がしにくく、体温が上昇しやすくなるため、熱中症になりやすい傾向があります。

3.肥満気味の犬


肥満気味の犬も熱中症に注意しなければなりません。なぜなら皮下脂肪には断熱材のような働きがあり、体内に熱がこもりやすくなるからです。また、首周りに脂肪が付くと、気管が圧迫されて呼吸がしづらくなります。スムーズに呼吸ができないと体温調節が難しくなり、熱中症の危険性が高まります。

4.子犬や老犬、持病のある犬


体の機能が未発達で体温調節が上手くできない子犬や、年齢にともない体温調節機能が衰えてくる老犬も熱中症になりやすく、注意が必要です。また心臓や呼吸器などに持病がある犬も、循環機能や呼吸機能の低下の他、脱水しやすいなどの要因により熱中症になりやすい傾向があります。他にも、てんかんを患っている犬は発作により体温が上昇し、熱中症になりやすいので注意が必要です。

犬が熱中症になってしまった場合の応急処置


熱中症は一刻を争う病気です。愛犬が熱中症になった時、または熱中症の疑いがある時は、すぐに応急処置をしてあげましょう。万が一に備え、以下のポイントを覚えておくと良いでしょう。

・日陰など、風通しの良い涼しい場所に犬を移動させる
・濡れたタオルなどで体を冷やし、体温を下げる
・水を飲ませる

愛犬が熱中症になったら、日陰やクーラーの効いた部屋の中など、すぐに涼しい場所に移動させてください。次に首や脇の下、後ろ足の付け根部分など、太い血管がある箇所を冷やし、体温を下げます。常温の水を体にかけて、体温を下げるようにしてください。水で濡らしたタオルを愛犬にかけて、うちわや扇風機などで風を送って体温を下げる方法も効果的とされています。

ただし、体を冷やし過ぎるのも良くありません。犬の体温が平熱を下回ると、低体温症になる恐れがあります。もし水を飲める状態であれば、水分を補給させてあげましょう。飲まない場合は無理に与える必要はありません。応急処置後はなるべく早く動物病院に連れて行き、診察を受けてください。

犬の熱中症を防ぐには?


犬が熱中症になった時の対処方法を知っておくことも大切ですが、事前に熱中症にならないよう快適な環境を整えてあげることはさらに大切です。ここでは、犬の熱中症の予防方法を3つ取り上げます。

温度・湿度を管理する


犬が快適に過ごせる温度は25℃前後、湿度は40~60%前後とされています。犬を室内で飼っている場合は、窓を開けて風通しを良くする、もしくはクーラーや扇風機を使用するなど、温度と湿度を管理しましょう。また、犬がいつでも水分補給できるよう、十分な量の水を用意しておくこともおすすめします。

朝晩の涼しい時間帯に散歩に行く


散歩の時間帯にも注意が必要です。夏の炎天下では気温や日差しだけでなく、アスファルトの照り返しによっても熱中症の危険性が高まります。特に犬は、地面に近い所を歩くため、地面からの熱を直接受けます。また、高温のアスファルトによって足の裏(パッド)に火傷を負うリスクもあります。夏場は気温が上昇する前の早朝か、涼しくなる晩に散歩へ連れて行くようにしましょう。熱帯夜などには、日中と同様のリスクがあるのでご注意ください。また、散歩時には必ず水を持参し、こまめに水分補給ができるようにしてください。

車内に犬を放置しない


窓を閉め切った状態の車内は温度が上昇しやすく、夏以外の時期でも熱中症になる危険があります。短時間であっても、エンジンを停止した車内に犬を放置するのは危険ですので、絶対にやめましょう。

夏バテについての記事もご覧ください。
【専門家監修】犬を夏バテから守ろう!よく見られる症状と3つの対策を紹介

まとめ


近年、夏は猛暑になることが多く、また季節を問わず急に気温が高くなる日も少なくありません。熱中症は発症すると予後も悪いケースがあり死亡リスクも高いので、日頃から注意してあげることが重要です。もし熱中症になってしまったら、素早く応急処置を行い、獣医師の診察を受けるようにしてください。

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