【専門家監修】猫がトイレ以外で尿(おしっこ)をするのはなぜ?原因と対処法を徹底解説
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一般的に猫は賢く綺麗好きなので、大抵の猫は毎回決まった場所で尿をします。しかし中にはトイレ以外で粗相を繰り返してしまう猫もいます。愛猫の粗相でお困りの飼い主さんのために、猫がトイレ以外の場所で尿をする原因とその対処法について解説していきます。
この記事の監修者
荒川 真希
ヤマザキ動物看護大学 動物臨床栄養教育学研究室
講師[愛玩動物看護師・ペット栄養管理士・VT・AHT・CDT・DGS]
トイレ以外で尿(おしっこ)をする理由
綺麗好きな猫がトイレ以外で尿をしてしまう理由はいくつか考えられます。ここでは、猫がトイレ以外の場所で尿をする理由を5つご紹介し、それぞれについて詳しく解説します。
1.トイレに不満がある
トイレをしている時は無防備になるため、愛猫にとってトイレが安心できる環境にあることは、とても大切です。トイレの設置場所や形状が愛猫にとって落ち着かないものであったり、好みの問題で現在のトイレが気に入らなかったりすると、別の場所で尿をしてしまうこともあります。また、大抵の猫は綺麗好きなので、排泄後にトイレが掃除されずに放置されている場合も、トイレを使わずわざと別の場所で尿をすることがあります。さらに、トイレそのものではなく、トイレ砂やペットシートの素材や種類に不満があるという可能性も考えられます。
2.飼い主の気を引きたい
猫は飼い主さんに構ってもらいたい、注意を引きたい、と感じる時に様々な行動に出ることがあります。甘噛みをしたり、鳴きながら身体を擦り付けてきたり、目の前で転がってみたり…。その方法の一つとしてわざとトイレ以外の場所で尿をする猫ちゃんもいます。飼い主さんにあまり構ってもらえず寂しい思いをしていることが原因で、飼い主さんの注意を自分に向けるために粗相をしてしまうのかもしれません。
3.健康状態や老化のため
愛猫の体調や健康状態の不良、もしくは老化が原因となり、決められたトイレできちんと排泄できないという可能性も考えられます。猫は元々、泌尿器に関わる病気が多くみられる動物です。そのため、病気が原因で思うようなタイミングや場所で尿ができない可能性もあります。さらに老化で足腰が弱ってそれまで使っていたトイレが使いにくくなったことが原因で、機敏に動けずトイレまで間に合わないといったケースも考えられるでしょう。
4.ストレスや不安がある
自宅の環境の変化や他のペット、家族との関係性などの外的要因から、ストレスや不安を抱え粗相をしてしまうこともあります。特に性格が繊細な場合は、頻繁に来客がある、家の周囲で騒音があるなど、いつもと違うことが起こるとストレスを感じ、トイレ以外の場所で排尿してしまうことがあります。
5.マーキングのため
猫は本来、マーキングにより自分の縄張りを主張する習性を持っています。マーキングの一種で「スプレー行為」とも呼ばれる通常よりも濃い尿をスプレー状に排泄する行動は、多くは未去勢のオスの猫に見られますが、まれにメスの猫が行うこともあります。屋外で生活する猫の場合は、オス猫同士の縄張りを主張するための自身の存在アピールという場合もありますが、室内飼いの愛猫がトイレ以外で尿をするのはこのマーキングの可能性もあります。マーキングと通常の尿とは異なり、猫が立ったままの状態で壁やドアなど垂直面に少量の尿をする、通常の尿よりにおいが強烈であるといった特徴があります。
愛猫が粗相してしまった時の注意点
愛猫がトイレ以外の場所で尿をしてしまった時、戸惑って慌ててしまう飼い主さんも多いと思います。ここでは愛猫が粗相をした時に飼い主さんが注意すべき点を2つご紹介します。
1.叱らない・反応しない
愛猫がトイレ以外の場所で尿をしてしまっても、決して声を荒げて猫を叱ったり叩いたりしないようにしましょう。基本的に、猫は綺麗好きな動物ですぐにトイレを覚えます。そのため、愛猫がトイレ以外の場所で尿をした場合は必ず何らかの原因があると言えます。それなのに、粗相をした愛猫をむげに叱ってしまうと、飼い主さんを怖がるようになり愛猫との信頼関係が失われるかもしれません。また叱られたことでストレスになり、粗相を繰り返してしまうなど逆効果になることもあります。さらに、粗相をしたことに「反応しない」ことも大切です。「〇〇ちゃん、おしっこしちゃったの!」と反応することで、愛猫はトイレ以外で尿をしたら構ってもらえたと記憶する場合があります。愛猫がトイレ以外で尿をした時は、決して叱ったり反応したりするのではなく、愛猫の様子を観察して原因を見極め、正しく対処することが大切です。
2.すぐに掃除する
猫は自分の尿のにおいが付いた場所を「トイレをする場所」として認識します。そのため、トイレ以外の場所で尿をした場合には、また同じ場所で粗相を繰り返してしまうのを防ぐために、すぐに掃除をするようにしましょう。猫の尿のにおいはとてもきつく、さっと掃除しただけではなかなか取り除けません。においが残らないよう「重曹」や「クエン酸」、また猫の尿専用の洗剤などを使用してしっかり掃除するようにしてください。
トイレ以外で尿をさせないための対策
飼い主さんを悩ませる猫の粗相。いくら大切な愛猫とはいえ、室内の色々な場所や家具に尿をされるのは飼い主さんにとっても困ってしまいます。ここからは、愛猫にできるだけトイレ以外で尿をさせないための対策を4つご紹介します。
1.トイレ環境を改善する
愛猫が安心して気持ちよく排泄できるよういつもトイレを清潔に保つようにしてください。トイレの理想的な設置数は、猫の頭数+1個と言われていますので、トイレの数が少ない場合は増やしてあげましょう。またトイレの設置場所や砂の種類、トイレの形状に満足しているかをよく観察し、何に不満があるのか分かれば改善するようにしましょう。さらに愛猫が老齢の場合は、楽に使えるよう高さのないトイレに変えたり、愛猫が普段よくいる場所のそばにトイレを移したりなど、ちょっとした工夫でより排泄が楽になるかもしれません。
2.一緒に過ごす時間を作る
日頃からこまめに愛猫に声をかけたり一緒に遊んであげたりなど、飼い主さんと猫が接する時間や機会を作りましょう。しかしあまり構い過ぎるとかえってストレスになる猫ちゃんもいますので、愛猫がいつ、どんな時に、どれくらいスキンシップやコミュニケーションを必要としているかを見極めるようにしましょう。愛猫への愛情や関心をしっかり示してあげることで、構ってほしくてわざとトイレ以外で尿をすることを防げるはずです。
3.動物病院へ連れて行く
スプレー行為をしている場合、大抵は避妊・去勢手術で改善されます。避妊・去勢手術には、マーキング以外にも発情期に見られる大きな鳴き声や攻撃的な行動の抑制、生殖器系の疾患の予防ができるなどのメリットがあります。妊娠や繁殖を望まない場合は、早めに動物病院に連れて行き、避妊・去勢手術を行うことがおすすめです。また粗相する以外に、明らかに具合が悪そうにしていたり、何らかの症状が見られたりする場合は病気の可能性もあるため、速やかに動物病院で相談するようにしてください。
4.不安やストレスを和らげる
まず、何が愛猫にとってストレスや不安の原因になっているかを見極めるため、愛猫の様子を観察し、最近起こった変化について考えてみましょう。引っ越しや模様替え、家族や他のペットの状況の変化など、様々な原因で猫はストレスを抱えることがあります。ストレスの原因が分かったら、できるだけ速やかに改善し、愛猫が安心して過ごせるようサポートしてあげましょう。
まとめ
飼い主さんと愛猫が共に快適に暮らすには、トイレ以外で尿をしてしまう原因を見極め、しっかり対処することが大切です。愛猫が粗相しても叱ったりせずに落ち着いて対応し、繰り返してしまうのを防ぐために実践できることをぜひ試してみてください。












